"..............カイム"
闇に封じ込められたロアルの声が届いた。
望んだことではなくとも、ロアルとこの黒き竜はずっと身も心も共有してきた。
故にもしかしたら、本来のロアルの想いに創黒の竜が触発されたのかもしれない。
破壊を止めた竜から零れた言葉に、一瞬そう錯覚する。
(あれは)
だが、違う。
それは本当に一瞬の錯覚に過ぎなかったことに、ロアルはすぐに気が付く。
創黒の竜と共有する二つの眼球が捉えた、紅き少年の姿が彼にそう気付かせた。
".............あの時の赤子が、ここまで成長しおったか"
瞳に映る紅い人影に、竜は面白そうにフンッと鼻を鳴らした。
捉えるその瞳をギラリと輝かせて、大きく裂けた口から鋭い牙を覗かせる。
"ロアルよ、喜べ。
..........お前が世界を引き換えにしてまで愛した、息子との再会ぞ!"
創黒の竜。ロアル。
共通の視線の先には、忘れもしない彼の姿。
ロアルが罪を犯してまで守りたかった、懐かしき息子の姿。
「ロアル―――」
そしてその息子が、父の名を呼ぶ。
曇りのない純粋な紅の瞳で、一匹の竜とその竜を引き連れる闇に染まったロアルの姿をくっきりと捉えながら。
しっかりと、見つめながら。
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