魔族の王であるはずなのに。
主君であるはずなのに、同士であるはずなのに。
裏切りだ。
ひたすら信じ、大切な物を賭け共に戦ってきた仲間達に対する、最大にして最悪の裏切りだ。
だがこの闇を纏った彼等にはそんなこと、問題になり得ぬ些細なこと。
彼等が消し去りたいのは、この世界。
そしてこの世界に生きる全ての人という生き物。
憎しみ殺し合う魔族も人間。
だがその両者も人という区分に括られれば、何も変わりはしない一つの種族なのだから。
ドオォォオンッ!
忌々しげに顔を歪め、今度は違う所に集る虫けらのような人の塊をまた吹き飛ばした。
また多くの命が消えた。
もはや消した相手が、魔族であるか人間であるか分からない。
ただ、人である。
それだけで消すには十分すぎる理由だった。
"――――まぁ、人を滅ぼすにはこの程度の力が在れば裕に足るか。
じわじわと忌まわしき存在がこの世界から消えていく。
汚れた世界が浄化されていく。
...........この最高の宴を楽しむには、丁度良いわ!"
ドォンッ。
ドオォンッ、ズドォンッ!
放たれる破壊の狂気はもう誰にも止められない。
堅固で人にとって絶対的であった世界が、呆気なく崩れていく。
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