mirage of story














「あれは..............ロアル様じゃないか」



ロアル。

あり得ない光景を前に出たのは、此の場に居ない君主の名。
ライルにこの戦場の指揮を委ね、自らは何故か戦線から外れていた本当の指導者。


魔族の国、彼等の母国魔族が築き上げた大国ロマリアの国王。







まさか。
有り得ない。

そう思う思考とは裏腹に、瞳にくっきり焼き付く光景には忠誠を誓った主のその姿に間違いは無い。























「ロアル様が――――ロアル様が竜を引き連れて、我等に加勢しに来て下さった!

我等に勝利を運んできて下さったぞぉおっ!」






ウワアァァッ!


誰かが叫んだ言葉が、皆を取り巻いていた不安を希望に転換する。

理解するまでに時間は掛かったが、その意味を理解した兵達は呆然と竜と自分達の主を見る。
そして言葉が終わるか終わらないか、そのうちに割れるような歓声が上がった。




皆は知っていた。

竜の存在を架空としながらも、竜という存在の力の強大さを。
その力には、到底人は及ぶことは出来ないと。




その竜を、自分達の主がこの決着の着かない戦場に引き連れてやって来た。

彼等にはそれを、勝利を意味するものとしか捉えられない。
故にこの戦場での勝利を、この世界での魔族の勝利を誰もが確信した。









.