「いいや、何にも」


キトラは下からの声に自分の見たまんまの答えを返す。









ザッ。
......ストンッ。

いくら見ていても変わらぬ状況に、キトラは諦めて見晴らしの良い木の上から軽い身のこなしで地上に下りる。
反動と風で木の葉がガサリと揺れた。









「おい.....いい加減この状況どうする?」



このままでは進むことも退くことも出来ない。
それに戦場では戦況を把握出来ないままの状況は、命取りになり兼ねない。

木の上から下りてきたキトラに、下に居た兵達の沢山の視線が集まる。












「んー......仕方ない。
俺が一旦本陣に戻って、隊長に確認してくるよ。

全員が持ち場を離れるわけにはいかないから、皆は此処で待機!俺一人で行ってくる!」




集まる視線。
キトラはその視線に揉まれ二三回呻くような声を上げると、半ば視線に観念したようにそう言った。


この場に居る誰もが、その行動をしなければならないということは分かっていた。
だがその指示がない上でのその行動は下手をすればただの単独行動に取られ、隊長に檄を飛ばされることを恐れてか分かってはいても誰も口にはしなかった。













「すまないな、じゃあ頼んだぞキトラ!」



「あぁ......じゃあひとっ走り行ってくるよ!」








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