キトラはライルが居る本陣よりも少し離れた場所に陣を張っていた。

位置としては東に外れた本陣よりも少しだけ前線。
先鋭部隊の一員であるキトラと数人の仲間が、ライルの指示で他の部隊の弓兵を中心とした兵達を集めて敵を討つべく待ち構えていた。








陣を構え暫く、敵が雪崩れ込み戦闘が始まる。

撃って討って、この弓で敵を―――人間を撃ち抜く。
それがこの戦いの魔族の勝利に大きく貢献することになって、敗北した人間達はやがてこの世界から居なくなる。


..........そして今は人間に、あのシエラという人間の少女に唆されて人間の側に付いているジェイドも、人間に付く理由は無くなってきっと自分達の元に戻ってくるはずだ。
そう、思っていたのに。




実際こちらに敵が流れてきたのは、ほんの一時だけ。
しかもその数は想像し身構えていたよりもずっと少なくて、正直拍子抜けし戸惑っていた。














「........今、戦況はどうなっているのかも分からない。

命令も無いのに持ち場を離れるわけにもいかないし、何かあったのなら隊長の居る本陣から何か報告が入るはずだけど......それもないし」




さて、どうしたものか。

キトラは高い木の上から、出来る限りの状況把握をしようと目を凝らす。
だけれど肉眼で確認出来る限り、やはり何も目立った戦闘も動きも見当たらない。















「おーい、キトラ!
そこからは何か見えるか?」



キトラ以外の兵士達も、この把握出来ない静まり返った戦場の状況が気になるのだろう。

同じ陣内の共に配置された先鋭部隊の一人が地上から木の上のキトラを見上げて叫ぶ。








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