mirage of story












「いってきます.....。
いってきます、そう言っていたと思います」




いってきますの言葉に、ほんの一瞬前までシエラが居たはずの場所に駆け寄った。

だけれどもうシエラは居ない。
彼女が居た空間の温もりが、開け放たれた窓からの風によって冷まされていくところだった。
















「.........そうだよ。
嬢ちゃんは最後、俺達に"いってきます"って言ったんだ」



「そう、シエラはそう言って一人で―――」




「確かに一人で嬢ちゃんは行っちまったさ。

.......だが、嬢ちゃんが俺達に掛けたのは"さようなら"なんて言う別れの言葉じゃなかった。
"ただいま"っていう再会の続きがある、"いってきます"だっただろう?」






ただいま。
再会の続き。

さようならには無いけれど、いってきますには在る。
また会おうという隠れた言葉の意味。














「..........また会えるってことさ。きっと、いや絶対。

少なくとも嬢ちゃんはまた俺達と会うそのつもりで居る。
俺達もそのつもりで居なきゃ、嬢ちゃんに失礼だろう?」



「........」




「だから俺達はな、嬢ちゃんがまたもう一度俺達のとこに"ただいま"って帰ってきた時に、ちゃんと笑って"おかえり"って言えるようにしとかねぇと。

そのためにも、もう一度嬢ちゃんと会う時までは―――この先にどんなことがあっても死ねねぇのさ」









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