「.............おいおい、お前はまた嬢ちゃんのこと考えてるな?
少しは頭休めろ。
ずっとそんなんじゃ、本番までに参っちまうぞ」
「え?」
頭の中で俺は後悔を巡らす。
そんな俺はまた難しい顔をしてしまっていたらしかった。
ハッとすると、逆光で見えなかったジェイドの顔が目の前にあり、その近さから今度は嫌でも表情が分かった。
「お、俺またそんな考え込んでる顔してましたか?」
その近さに若干後ろに退きつつも、ジェイドさんに訊ねる。
「あぁ、してたしてた!
おまけに顔にドドーンと"嬢ちゃんのこと考えてます"って書いてあったぞ?
お前はすぐ顔に出る。
気をつけろー、少しはポーカーフェイス身に付けとけ?
結構役に立つぞ、しらばっくれる時とか」
「.......気を付けます」
そう言うジェイドさんの顔を見てみると、いつもの何を考えてるか分からない軽い笑みに戻っていた。
ハハハッ。そう笑うジェイドさんは、ついさっき見せた真剣な本来の彼とは違って、まるで別人に見える。
これが所謂ポーカーフェイスとやらか、俺はそう納得して心の中で頷いた。
「なぁ.....カイムよ?
姫さんが―――嬢ちゃんが一人行っちまう前に、最後に俺達に何て言って行ったかお前覚えてるかい?」
「シエラが、最後に?」
ヘラッと笑うジェイドさんが、ハハッと苦笑いする俺に向かって訊ねる。
シエラが最後に、一人で行ってしまうその前に俺達に向かって言った言葉。
覚えているかと聞かれても俺の中にはパッとすぐには浮かんで来ず、俺は言葉を詰まらせた。
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