mirage of story

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ジェイドさんは真剣な顔をしていた。
表情は太陽の光によって遮られて見えないけれど、それでも俺の瞳に映るジェイドさんはいつもの彼とは違っていた。





一つに結った長い綺麗な銀髪を揺らし、瞳の紅歪ませてふざけたように笑う。


ヘラッと軽いパッと見れば絡みやすい笑み。
だが反面、何よりも強く深く関わろうとするものを拒絶する笑み。


顔にはいつもそんな笑顔を浮かべているのに、心は冷めていて笑ってはいない。
それが、俺がジェイドさんに今まで抱いていた印象だった。












この戦い.......全力で行くぞ。


そのジェイドさんの言葉が脳裏に焼き付く。

全力。それも他人のために。
それは俺の中でずっと抱いていたジェイドさんのイメージとは、正反対とも言える言葉。






........どうやら自分はずっとジェイドさんのことを誤解していたらしい。
表面しか知らなかったらしい。

本人がその本質を隠していたというせいもあるが、何だか申し訳なくなって俺は心の中でジェイドさんに頭を下げる。

















(ジェイドさんも、俺と同じ想いなのか)



同じ想い。
それは彼女を―――シエラを心配する想い。

ジェイドさんは昔のシエラ、つまりルシアス姫とはどうやら親しい仲だったらしい。
だから同じとは言えど、彼の心配はルシアスである彼女に対するものかもしれないが。









(...........俺の知らない過去にシエラとジェイドさん―――そしてあのライルという人は、深く繋がっていたのか)




俺がシエラと出会ったのは、彼女が俺の居たあの村を訪ねてきたあの時。本当に最近のこと。


だからそれ以前のシエラを俺は知らない。

彼女を十分に知っているつもりでも、それは出会ってからの彼女だけでほんの一部。
知らない彼女の方が、圧倒的に多い。









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