夜の闇。
その暗がりに紛れて、カイム達は敵と味方渦巻く戦場へ乗り込む。
そこには大切な人も居る。
そこには憎い人も居る。
そこに何が待っているかは分からない。
だがそこが、全ての終着点となることはカイムもジェイドも皆、心の何処かで分かっていた。
「―――嬢ちゃんの、姫さんの想いや勇気を無駄には出来ねぇ。
だからカイム.......」
動き出した船に幾重もの想いを馳せ、最後にもう一度だけ水面の向こうを見つめるとジェイドはクルリと身を翻した。
「だからカイム、この戦い.......全力で行くぞ」
翻る。
それと同時に薄く広がり太陽の光を遮っていた雲が切れ、強く光が注いだ。
その光が逆行になって、カイムにはこちらに翻ったジェイドの表情は見えない。
けれど彼はきっと偽りではなく本当の彼の顔をしていると、カイムは思った。
「―――はい」
カイムは表情の見えないジェイドに、深く大きく頷いた。
.

