あぁ、彼女は。
今シエラは、どうしているのだろう?
この湖の向こうでたった一人、彼女が付けると言ったけじめに向き合っているのだろうか?
ちゃんと、向き合うことが出来ているのだろうか?
カイムの頭の中に浮かぶのは、彼女のこと一色だった。
「........そーんなずっと見てても、早く着けるわけじゃねぇんだぞ?」
水面の向こうを見つめ続けるカイムの背。
忙しなく走り回る船員達の間を器用にすり抜けて、カイムの元に近寄る背の高い人の影。
後ろを振り向かなくともそのヘラッと笑いを含んだ声と、やる気無さそうな足音にその人が誰なのかカイムにはすぐ分かる。
「分かってます......分かってますけど、こうでもしてないとどうしても落ち着かなくて。
ジェイドさんも心配でしょう?
シエラのこと」
背の高い影、やる気ない足音と共に甲板へとやってきたジェイドの方をカイムはそう言い振り返る。
振り返るとそこには案の定ジェイドが居て、一つに結った長い銀髪を風に揺らしていた。
「いーや、俺はそこまで心配しちゃいねぇよ」
「え?」
カイムの暗めの声。
ジェイドのいつもと変わらぬ何の緊張感も無いような声。
対なる二つの声色が、慌ただしい船員達の声を背に甲板で交わる。
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