"お主の求める者の哀しみは、此処に居る誰のものよりもずっと深い。
.......その哀しみを追って行けば、辿り着けよう。
お主の想いで、その哀しみを消してやれ。それがどんな方法であれども。
それこそお主にしか為すことが出来ぬことぞ"
空をゆっくり旋回しながら水竜は言う。
私はそれに一つ大きく頷いた。
"行くぞ、シエラ"
高度がだいぶ下がってきた。
大地の茶色が私の瞳に濃く映し出される。
これなら地上の様子が分かる。
私と水竜はその高度を保ったまま、後ろに広がる湖に沿って哀しみの強い方へと向かっていく。
風と共に大地と空の狭間を駆け巡る。
大地を見つめる私と水竜の同じ色をした瞳に映し出された光景は、あまりにも残酷で悲惨な戦場の現実。
血に塗られた大地と、もうすでに屍と化し大地に転がる人であったもの達の姿。
酷い光景。
悲惨な現実。
.......そしてこれは全て私達人が作り出してしまったものだ。
人と人とが殺し合い憎しみ合ったその末路。
それが、これ。
私は胸が痛くなった。
"...............あれだ"
見下げる大地。
血に塗られ屍に埋め尽くされた、哀しい大地。
そしてその上。
私と水竜の視線の先、その大地に一人の人の姿があった。
青みがかった髪。そして遠く大地の果てを見つめる綺麗で深い蒼い瞳。
私の嫌いな軍服に、鋭く磨かれた血に塗れた剣。
その全身に哀しみを纏い、屍だらけの大地に一人生きて立ち尽くす少年。
シエラとしての私が憎み、ルシアスとしての私が愛す人。
".......降りるぞ"
そして私は、彼に会うために此処までやって来た。
大切な仲間に別れを告げてまで、此処へやってきた。
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