海みたいな君に恋をした


「美波ー!!」
ドアを開けて、お母さんが入ってきた。
私は声が出せない、だから筆談で会話をする。
ベットの端に置いてあるノートとペンを取った。
『お母さん、どうしたの?』
「美波の新しい洋服とか色々買ったから持ってきたの。」
『ありがとう。』
お母さんは優しくていつも私を優先してくれる。
「あぁ〜そうそう、またお父さん出張だって。次は北海道。」
『そうなの?1人で寂しくない?』
お父さんは、よく出張で家にいることはあまりない。
いわゆる単身赴任ってやつ。
でも、帰ってきた時や休みの日には色んなところに連れていってくれた。
お父さんも優しい人。
お母さんもお父さんも大好きなんだ。
『そっか、いつもありがとう。』
“お母さん大好きだよ”
って、自分の声で言いたい。
それが普通かもしれない。
けれど、その普通が私にとっては普通じゃない。
普通ってなんだろう……。
今の私の夢は、自分の思いを自分の声で伝えること。