私は小声で昨日あったことを麻里恵に話した。

「…麻里恵がやってくれたんじゃないよね?」

「そんなわけないじゃん…!私そこまでお人好しじゃないよ」

「そうだよね。じゃあ誰がやってくれたんだろう…?なんか凄く不気味で…」

しかも榊さんが今日からここで働くんでしょ?私、仕事手につくかな…。

「確かに気味悪いけど、その内誰が救世主なのかわかるでしょ。…ってそれよりさ、昨日また聞いたんだけど榊さんって向こうで彼女と別れてこっちに戻ってきたんだってよ」

麻里恵の急な話の方向転換に思わず顔が引き攣る。

「彼女…?」

榊さんのことを思い出してから、当然のように榊さんはまだ私のことが好きだって思い込んでたけど…もう三年の月日が流れてるんだ。

まだ私を好き、そんな筈あるわけない。

そう思ったらなんだか心がホッとした。
私ってば恋愛経験がないからこんなことで悩んでたんだ。

っていうか…そもそも私に告白したこと自体罰ゲームかなんかなんじゃないの?

罰ゲーム
自問自答してそれが最もらしい理由で妙に納得してしまった。そうだ、絶対そうだ!

「麻乃?何一人で笑ってんの?キモいよ?」

「ふふ、ごめん、思い出し笑い」

あの時のことは同期の麻里恵ですら知らない。誰にも話してないから。

このことは墓場まで持って行こう。