今日は澤野さんを待たせているからと、エレベーターを降りた後、麻里恵は小走りで駐車場に行ってしまった。

麻里恵に言われたことを頭で整理しながら反復する。メインが澤野さんで、デザートは更科総務や芸能人…。どういうことだろう?

帰宅し、シャワーを浴びてから目についた少女漫画を手に取る。

「…」

こんな若い子たちだって恋愛してるのに、なんで私は恋愛が出来ないんだろう。

告白されてからの交際経験は何度かある。でも、数か月もすると相手から必ず似たようなことを言われる。

“ほんとに俺のこと好きなの?”

“好きだよ、だから会ってるんだよ”

そう言っても信じてもらえない。それでいつの間にか関係は終わってる。

漫画の主人公たちは麻里恵と同じようにきらきらしながら恋愛している。誰かと付き合って、でも他の人が気になりだしてその人とうまくいく…それでハッピーエンド。そんなカップルたちも、誰かに目移りするの?

答えは出ないまま朝を迎える。今日は私服を持って出勤する。飲み会っていってもどうせあんまり飲めないし、全体飲み会になるとほとんど隣の人としか喋れないから気を遣うだけなんだよね…。少しだけ飲んで食べたら今日もすぐ帰ろう。


エントランスで麻里恵の後姿を見つけ声をかける。

「おはよう」

「あ、麻乃。おはよ」

今日はなんだかとても眠そうな顔をしている。

「寝不足なの?」

「んー。昨日澤野さんち泊まったからさ」

お泊り…なんか、いやらしい響きだ。

「あれ?麻乃ってば何赤くなってんの?」

私の脇腹を人差し指でツンツンとつつく麻里恵。絶対私をからかっている。話を変えようと、私は昨日考えたことを麻里恵に話してみた。