だから、お前なんて。




見た感じ、今家にいるのは春瀬一人だけのようだ。


ベッドについてもなお、彼はこの状況を信じていない様子。



「ぜってぇ、夢じゃん……だるい夢だわ。ゴホゴホ!」


「だから本当だって」



そういいながら乾いた冷えピタを剥がして、新しい冷えピタに貼り変える。



「冷てえ」


「そりゃあ、冷えピタだからね。薬は飲んだ?」
「ん……」


「そっか。春瀬……その……傘、ありがとう。すごく助かったよ」



言えた。
今日1日ずっと言いたかったお礼が言えた。



「……別に俺じゃねぇし」


そういって、そっぽを向いた春瀬。

わかりやすい嘘だ。



「……嬉しかった。でも春瀬はほんとバカだよ。自分が濡れて風邪ひいてどうするのよ」



そういいながら、コンビニで買ってきたスポーツドリンクを袋から取り出して、春瀬の近くに置いたあとに、今までそっぽを向いていた春瀬が180度体を回転させて、わたしの腕を掴み、そのまま引き寄せられた。


バランスを崩したわたしはもちろん、春瀬の方へ倒れ込み、彼の腕の中に包まれた。