「なんか用でも?」
「よ、用はないけど」
「さっきから“けど”ばっかりじゃん。たまには素直になって会いに行ってきなよ。春瀬くんにはあんたが一番の特効薬よ」
特効薬って……。
意味がわからなさすぎるよ、千里さん。
でも、わざわざ貸してくれたんだもんね。
それくらいしても怒られないか。
むしろ、何かを買って持ってくのが普通か。
「なんかアイツの好きなものでも買って持っていこうかな。喜んでくれなくても様子だけ見に行ってくるよ。ちょっとだけ会いたいし」
「もう〜〜!素直になった杏彩ってとんでもなく可愛いよね〜〜〜!アイツが惚れ込むのもわかるわ〜〜!」
「な、何言ってんの。千里」
「こっちの話だから気にしないで。じゃあ、頑張ってね!」
「うん!」
ただ、お礼を言いに行くだけ。
何もせずにゼリーとかを持っていくだけ。
ただ、それだけだから。



