今頃、春瀬は本当は傘があると白状した牧野さんと帰ってるのかな。


それとも、友達と帰ってるのかな。


どちらにしよ、わたしは濡れて帰るか……。


いつも傘を持ってこないのは本当に忘れちゃうからだし天気予報を見ていないからだけど、心のどこかではまた春瀬とふたりで傘をさしながら帰れることを期待しているのかもしれない……なんてね。


余計なことは考えないで早く帰ろう。


雨も少し弱くなったし。


春瀬たちが帰った頃が一番本降りだったような気がする。


ちょっと待って正解だったかな。


教室から出て、靴箱までいき、靴を取り出そうと靴箱を空けるとそこには見覚えのある黒い傘が一本入っていた。



「……嘘」



思わず、漏れた声。

だって、信じられない。

その傘の持ち主は、今日傘を忘れたと言っていた人。