だから、お前なんて。



その瞬間、春瀬の体が一瞬だけ止まったような気がしたのはきっと気のせいなのだろう。


可愛らしい一人の女の子が春瀬の元へ走っていく。


あれは一つ年下で可愛いと噂の牧野さんだ。

春瀬のことが好きで必死でアピールしているらしい。

今はいい感じで春瀬も彼女のことを気に入っているという情報まで入ってきている。


アイツの情報なんて興味もなければ、聞きたくもないのに。

勝手に更新されていく春瀬の情報はわたしを苦しめるだけなのに。


わたしとはまるで違う、可愛らしくて守ってあげたくなるような女の子。


こちらをチラッとみた春瀬と視線がぶつかりあった。


春瀬はフッ、とわたしに勝ち誇ったような笑みをみせると何も無かったかのように牧野さんに視線を戻した。


な、なによ……。


まるで、「お前と別れて俺は幸せだ」と言われているような気がして胸がチクリ、と分かりやすく痛んだ。