「なに、急に大きな声出して」
「しぃーっ!春瀬が近くにいるから」
「ん?あー、なるほどね。ちゃんと気持ちは自覚済みか」
納得したように千里は言った。
いくらなんでも千里に言われなくても今回ばかりは自分の気持ちに気づいている。
「さすがにね」
「春瀬くんってさ、わりと真っ直ぐな男の子なのかもよ」
「ありえないよ。春瀬は屈折しまくり」
あの春瀬が真っ直ぐだなんて信じられない。
こんなこと言うのも申し訳ないけど千里、どうかしてるよ。
「まあ、杏彩あんた自身が屈折しまくりだから気づかないのかもね」
なんて、笑いながら言う千里。
ちょっと、千里さん。
笑いながら言ってるけど、ちゃんと失礼だからね。
自分の性格がひねくれまくってることくらいわかってる。
こんなんだから好かれないのも知ってるもん。



