「本当に嫌なら迷惑なら登校する時間をズラせばいいじゃん」
「そ、それは……」
何も言えない。
だって、千里の言う通りだから。
春瀬が来ることを嫌がるのなら登校時間を早めたりギリギリに出たら彼と登校することもなくなる。
それをしないのは他の誰でもない、このわたし。
今でも春瀬を特別に想っている証拠なのだと思う。
だけど、認めたくないから今も蓋を被せたまま。
この気持ちは封印したんだよ。
「杏彩はまだ春瀬くんのことが、」
「ううん、違う。違うよ。わたしは柏木くんをまだ引きづってる」
わざと大きめの声で言った。
さっき、春瀬の声がしたら近くにいる。
自分でもこんなことをしてなんの意味があるのかわからない。
ひょっとしたら、ヤキモチをやいてくれるかもしれない。
そんな淡い期待なんて抱いていないんだから。
絶対に、絶対に抱いてなんか……。



