だから、お前なんて。



“大嫌い”


別れてから何度も春瀬に投げつけた言葉。

本当はそんなこと思っていないくせに。

大嫌いとは真逆の気持ちを今も抱き続けているくせに。

それが、言葉にできない。



「それができたら苦労してないよ」

「まあ確かに。あんたらはとにかくこじらせすぎ」

「べ、別にこじらせてないし。春瀬とは終わった関係なの」

「じゃあなんで最近二人で登校してくるの」



くっ……さすが千里だ。

痛いところばかりついてくる。



「そ、それは……春瀬が家まで来るからだよ」



そうだ。

春瀬が勝手にわたしの家の近くで待っているから。

だから一緒に行くはめになるんだ。


わたしはなにもしていないし、それを嬉しくも思っていない。


朝、玄関の扉を開けて、少し歩いた先に春瀬がイヤホンをつけて壁にもたれかかっている姿がない時、どこかで心が落胆していることなんて、絶対ありえないんだから。



春瀬がいるときは足取りが軽いなんて、絶対にないんだから。