“また”
そう、お前は言うけど俺は一度も遊びだったことはない。
お前にだけは本気だった。
そんなこと、お前は何も知らないんだろうけど。
「……じゃあ、本気ならいいわけ?」
「っ、」
俺の言葉に一瞬、目を見開いて言葉を失っている杏彩。
「本気なら、俺のことまた好きになってくれんの?」
もし、本当にそうでも俺は杏彩には相応しくないのだろうと心の中で思っている自分もいる。
俺は矛盾しているんだ。
手に入れたいのに、手に入れたくない。
そんな葛藤が俺の心の中を支配している。
「な、ならないし!」
「だったら、別に遊びでもいいじゃん」
また気づけば思っていることと逆のことを口にしている。
本当は、好きになってほしいと思っているのに。
もう一度、俺の彼女になって隣でずっと笑っていてほしいと思っているくせに。
「ふざけないでよ。もーあんたなんて好きにならないし、嫌いだよ、大嫌い」
“大嫌い”
別れてからその言葉を何度お前の口から聞いたっけ。
もうわかんなくなるくらい聞いている。
「そんなに言われなくたって知ってるっつーの」
もう、お前が俺に興味がないことくらい痛いほど分かっている。
だけど、もしお前がもう一度俺を好きになってくれたとき、俺はお前のことを守れるんだろうか。
そんな葛藤だらけの心をお前にだけは読まれたくなくて意地悪ばかりしてしまう自分が本当は一番ダメなのだろうな。