「ありがと、春瀬」
「おう」
“春瀬”
聞き慣れない。
“環”
君の可愛い声でもう一度俺の名を呼んで欲しいなんて贅沢だよな。
「んじゃあ、あそこでゆっくりするか」
そう言って俺が指さしたのは公園。
「そうだね」
特に何をする訳でもなく、ベンチに座った。
付き合っていた頃もこんなことがあったなあ、と思い出す。
「ねえ、春瀬」
「ん?」
「なんで今さらわたしに構うの?」
「なんでって、別に理由なんてねえよ」
────お前に振り向いて欲しいからだよ。
なんて、言えるわけがねえ。
「また遊びならやめてよね」
不機嫌そうに俺のことをキッ、と鋭く睨む杏彩。