「いらねえって」

「申し訳ないからダメ!」



いらねえよ。

お前といれるだけで俺は十分なんだ。

それ以上のものなんてこの世に存在しないと思ってる。



「これ以上言ったらその口塞ぐぞ」

「なっ、」



もらったばかりのジュースを明らかに動揺している彼女の頬に当てた。



「つ、冷たいじゃん!」

「嫌なら黙って受け取れ」



そういうと、何も言えなくなったのか大人しくジュースを受け取りストローに口をつけた。

少しふてくされたようにジュースを飲む杏彩が可愛すぎる。

思わず、触れたくなる衝動を抑えながら平然を装って自分もジュースを一口飲んだ。

パイナップルの甘酸っぱい味が口の中で広がる。


俺の恋とは違う。苦いだけの恋。


自分のせいで甘酸っぱい恋は終わってしまった。


触れたい時に触れられること、会いたい時に会えること、好きな人と思い合えることそれは奇跡なのだと改めて思い知っている。


手放さなければよかった、何度そう思ったって現実は変わらない。