「いらっしゃいませ」
「俺、何にしよっかな」
ふと、彼女をみてみるとキラキラと目を輝かせて店内を見渡していた。
あーあ、またそんな可愛い顔して。
柏木ってやつもこんな可愛いコイツをみたんだろうか。
みてたらなんかムカつくな。
俺だけの杏彩でいてほしいじゃん。
こんな顔知ってんの、俺だけでいいじゃん。
「当ててあげる。パイナップルジュースでしょ」
得意げにこちらを見ながらとびきりの笑顔で言った杏彩。
ああ、俺の好きな物覚えててくれたんだ。
たったそれだけのことなのにこんなにも嬉しくなるなんて俺もどうかしていると思う。
“好き”
その言葉をもう君の口から聞けないことくらい俺だってわかっている。
君を手放したのも自分が悪いことくらい全部、わかっている。
ただ、世の中にあるものすべてをないものとして考えていいなら俺は迷わずお前を選んで離さない。



