お前が一番欲しいものが、愛情だってことくらい知っている。
だって、君の親は仕事人間だから。
家に帰っても一人、両親が家に帰ってくるのは夜遅くで、休みの日は遅くまで眠っているそうだ。
かといって、愛されていないわけではない。
ただ、両親は仕事が最優先で自分を優先はしてくれないらしい。
だからこそ、誰よりも人からの愛情を求めているって知ってて、それでも俺は手放してしまったんだ。
本当は俺が誰よりも深い愛情を注ぎたかった。
「そっちこそ、柏木くんのこと何も知らないじゃん」
「知らねえよ。知りたくもない」
「だったら……!」
「お前を泣かせた奴は全員クズ以下だろ」
柏木がどんなやつかなんて俺は知らない。
彼女である先輩とどんな関係を築いているのかも興味なんてない。
だけど、お前が泣かされたのになんで柏木のことをいいように言わねぇのといけないの?
「っ、」
「まあ、俺もそうだろうけど」
自嘲気味に言ったけど、杏彩はなにも言わなかった。
いつもならすぐに『クズ』っていうくせに。
そうやって、黙られると俺も調子狂うんだけど。
俺がお前を傷つけたことくらい自分が一番よくわかってるっつーの。



