「……そんなので、ドキドキなんてしないから」
そういって、俺のことをキッと睨む。
知ってる。もうお前が俺に興味が無いことなんて。
無駄な悪あがきだってわかってるんだ。
「ふーん」
だけどさ、無理やり振りほどいたりしないところをみるとまだ俺にも可能性があるって期待してもいい？
「自分だってしないくせに」
「俺はするかもよ。お前限定で」
「そんな言葉に騙されないもん」
杏彩はそんなに甘くないみたいだ。
まあ、そんなのわかりきっていたけど。
「へえ。アイツには騙されたのに？」
「……騙されてなんかないもん」
俯いたまま言葉を発した杏彩。
騙されてたんだよ、お前は。
柏木にいいように利用されてただけ。
そんなこと頭のいいお前だってわかってるくせにその事実から目を逸らしたいだけだろ。
「利用されてただけってわかんねぇの？」
「違う。柏木くんはそんなことしない」
「お前はアイツの何を知ってんの？深くも知らねぇくせに軽い好きの言葉一つくらいで簡単に信じるなよ」
傷ついたくせに、辛いくせに、強がるなよ。
