だから、お前なんて。



「えー、じゃあ俺の家?」

「絶対やだ」


即答かよ。

まあ、ほんとうに連れていく気はないけど。


「まあ、テキトーに行くか」

「……早く帰らせてね」

「気分による。もしかしたら帰さねぇかも」


そういうと、杏彩の頬はわかりやすく、ほんのりと赤く染まる。

ほら、こういうウブな反応がいいよね。そそるわ。


「へ、変態!」

「そうだよ。俺は変態だよ」

「開き直らないで!」

「ほら、行くぞ」


掴んでいた手を離して歩き出すと、杏彩が後ろから「待ってよ!」と可愛らしく駆け足で追いかけてきた。

そういえば、朝もそんなことあったな。

杏彩が俺を引き止めるなんて思ってもいなかったから正直驚いたけど、あれはマジ可愛かったな。

ギャップ萌えってやつ?

どうしてだが、俺の隣は歩こうとはせずに斜め後ろをちょろちょろと歩く杏彩。

なんで俺の隣にこねぇの?

ムカつく。


「そんなところにいられると目障り」


そう言って、彼女の小さな手を、付き合っていた頃に何度も繋いでいた手をそっと握った。

必然的に俺の隣を歩くことになった杏彩の視線はずっと下がったまま。