だから、お前なんて。



「意味不明」

「お前には一生わかんねぇよ」


俺の気持ちなんて。

俺のことが嫌いなお前にはわかんねぇよ。

別にわかってくれなくていいけど。


「別にわかりたくないよ」


でしょうね。わかりきっていた回答だったのに俺の心が少しだけ傷ついている。そんなことお前には知られたくない。


「あっそ」


だから、こんな素っ気ない返事しか返せない。

せっかく、ふたりきりの空間なのに。

どうしていつもこんなふうになっちまうんだろう。

ローファーに履き替えて、校門を出てしばらくしても俺たちの間に会話はない。

ただ、まだ掴んでいる手をどのタイミングで離すべきなのか考えていた。

すると、隣から可愛い声が耳に届いた。


「どこ行くの?」

「どこ行きたい?」

「あんたが決めてよ」


態度は相変わらずだ。

正直、杏彩だけだった。

俺と付き合ってこんなに強気でいたのは。ほかの女はすぐに俺にベタベタしてくるけど、杏彩だけは触れてこなかった。