「あーずちゃん」
「げっ」
思っていた通り、先に教室から出ようとしていたあずちゃんに声をかけると、彼女は顔をしかめた。
「ブッサイクな顔すんなって」
「うるさい。帰るんだから退いてよ」
「ダーメ。お前はこれから俺とデートすんの」
そう言って、彼女の細い手を掴んで歩き出した。
「ちょっと……!それは断ったじゃん!」
「何?聞こえねえわ」
嘘。聞こえてるけど聞こえていないフリをした。
「絶対聞こえてるでしょ」
「聞こえないね」
悪いけど、俺にとって都合の悪いことは全部聞こえないようになってんの。
「嘘つき」
「お前にだけは言われたくねぇな」
嘘つき、なんて。
嘘ばっかりのお前にだけは言われたくない。
何一つ自分の気持ちを言わない。
そんなに俺は信頼されていなかったんだろうか。
「手、離してよ」
「やだ」
「なんで」
「離したくねぇから」
できることなら、このままずっと掴んでおきたい。
ほかの男のところになんて絶対行けないように。
俺だけが視界に映ればいいのに。



