だから、お前なんて。



ポケットに手を突っ込んで、再び歩き出す。


「杏彩が笑えるなら俺はクズでもなんでもいいわ」

「……ベタ惚れだな」


くすり、とそしてどこか切なげに笑った大和。

たぶん俺の気持ちを考えてくれているんだと思う。

それから教室に戻った俺たちはそれぞれの席に腰を下ろした。

授業が始まり、俺はテキストに目を向けつつ、左斜め前を向くと、視界に入る愛おしい彼女の姿。

一生懸命になって授業を聞いている彼女。

だけど、たまにコクンと頭が下がるところを目撃しては可愛いな、と思ってしまう。


「おい、春瀬。ちゃんと聞いてるのか」

「あー、はい」


そんな可愛い杏彩に見とれていると担任に声をかけられた。


「ぼーっとすんなよ」

「了解ですー」


めんどくせぇな。さっさと進めろよ。なんて思いながら視線を下に落とす。

授業なんて聞かなくたって大丈夫だろ。

それから全ての授業を受け終わり、放課後になった。

これから杏彩と出掛けんだ。

素直に嬉しいけど、アイツのことだから先に帰ろうとか思ってそうだな。