「不器用すぎんだよ」

「優しくしたいのに杏彩を前にするとできねえ」


本当はもっと近くにいって、頭を撫でてその小さな体をぎゅっと抱きしめやりたい。

柏木なんかよりも、もっと、もっと好きなのは俺だ。

あんなやつに負けるわけない。


「どんどん嫌われてるんじゃね?」

「お前……それを言うなよ」


そんなことくらい俺が一番わかってるんだよ。

だから、悩んでるんじゃねぇかよ。

どうやったら杏彩がもう一度俺を見てくれるか。


「今日はデートなんだろ?」

「まあ、強引だけどな」

「だったらそこで見せつけるんだよ。お前が彼女のことこんなに好きだってこと」

「どうやって?」

「手とか繋いだり?」

「そんなことしたらもっと嫌われるじゃん」


杏彩はただでさえ俺の事を女たらしのクズだと思っているのにそんなことしたら終わりだ。

また杏彩が遠くなる。そんなの嫌だ。