「なに?俺のことが恋しくなって追いかけてきたわけ?」


そう言っている春瀬の表情は見えない。

なぜなら、彼は振り向かずに前を向いているから。
いま、春瀬は何を思い、何を考えているんだろうか。


「そ、そうじゃないけど……」

「ふーん、あっそ」


春瀬は急に素っ気なくそういうと再び歩みを進めた。

このままじゃ、また春瀬が遠くなっていく。

無意識にそう思ったあたしは止めていた足を動かして、春瀬のベストをぎゅっと掴んだ。

すると、またしても足を止めた春瀬だけど視線は合わないまま。


どうして……あたしの方を見てくれないの?


いつもいつも、一人で行ってしまう。


「なに」

「……あたしのほうをみて」

「やだ」


その言葉通り、春瀬はまだ前を向いたままだ。


「春瀬……なんかごめんね。巻き込んじゃって」


春瀬は何も悪くないのに、あたしのせいでクラスメイトと険悪な雰囲気になってしまった。