春瀬が守ってくれるはずがない。
あんなの冗談だよ。
真に受けたって傷つくだけだもん。
「あー、お前のせいでイライラする」
「こっちだってそうだよ」
「あずちゃんを傷つけていいの、俺だけだから」
「はあ?」
本当に、意味がわからない。
傷つけたいのか守ってくれているのかわからない。
だけど、不思議とその言葉に嫌気はささなかった。
「お前らみたいなゴミが杏彩を貶すな」
それだけ言うと、春瀬は教室から出ていってしまった。
“杏彩”
呼び捨てにされたのなんていつぶりだろう。
まさかの呼び名に鼓動が早鐘を打ち始め、どんどん加速していく。
勝手にカッコつけないでよ。
「なんだよ、アイツ……」
あたしはハッとして、椅子から立ち上がると教室から飛び出して春瀬の背中を追いかけた。
「ま、待ってよ……!」
すると、ピタリと春瀬が動かす足を止めた。



