だから、お前なんて。



唯一、あたしの全てを知っている人。

春瀬にある日突然振られたことも柏木くんと関係を持っていたことも。

全部を受け止めて、仲良くしてくれている優しい女の子だ。


「ねえねえ、春瀬くんとヨリ戻したの?」

「え?」

「朝からみーんなが言ってたよ!」

「そんなわけないじゃん。こっちは振られたんだよ?」

「まあそうだけど……って彼は大丈夫なの?」


彼、というのはきっと柏木くんのことだと思う。

千里にはまだ関係が終わったことを言っていない。

昨日は正直春瀬のせいで忘れてしまっていた。


「……彼とはもう終わったよ」


少しぎこちなく笑っていうと、千里は驚いたように目を大きく見開いたけど「そっか。大丈夫、杏彩は何も悪くないよ」と優しい笑顔を向けた。


彼女はとてつもなく優しい。


だけど、あたしが春瀬に振られたときはなぜか『意味がわからない』と呟いていたことを覚えている。

何の意味がわからなかったのは未だに知らない。それにそんな前のことを聞けるはずもない。