だから、お前なんて。



ふと、自分の耳を触る。

両耳にあいているピアスの穴。


『あたしも環とお揃いがほしいなぁ』

『んじゃあ、これやるよ』


そう言ってもらったピアス。

片方は春瀬がつけていて、もう片方はあたしがつけていた。

付き合う前はあいていなかったピアスの穴は春瀬と付き始めた頃にあけたのだ。

後悔なんてなかった。

だって、大好きな人と同じものを身につけられるから。

それくらい、好きだったんだ。

他の人なんて視界に映らないくらい。


「なのに、なんで……っ」


春瀬はあたしだけを見てくれないの?

そっちから手放したくせにどうしていまさら優しくしてくるの?

わかんないよ。
春瀬が何を考えてるのか全然わかんない。

いったい、何が目的なのだろう。


そんなこと考えながら教室に入り、席に着くと頭上から「おはよう」と可愛らしい声が降ってきた。


「おはよう」


あたしの友達である、高島千里(たかしまちさと)が声をかけてきた。