だから、お前なんて。




だから……なんでそんな悲しそうに笑うの?

こんなことしてもちっとも楽しくないことなんて、満足していないことなんて自分だってわかってるんじゃないの?


「は、春瀬は確かにクズだけど……優しいから無理やりはしないって知ってるから」


それだけ言うと、まっすぐあたしを見つめている春瀬からふいっと視線を逸らし、胸元を押して春瀬をその場に残してあたしは早歩きで教室まで向かった。

ドクンドクン、とまだ高鳴っている鼓動を鎮めるようにふぅと深呼吸をする。

あんなことを言ってしまった。

思い切り嫌がればよかったのにあたしにはそれができなかった。

だって、あまりにも春瀬の瞳が悲しみで揺れていたから。

後を追ってこないところをみると、あれで納得してくれたのか。

いや、あたしの言葉に驚いて春瀬は放心状態に陥っていたようにもみえた。

なんであんなことを言ってしまったのかは自分でも分からない。


突き放せばいいのに、突き放せない。

春瀬はどこまでもズルい。

あたしが優しくしてほしいときに優しさをくれるのはいつも春瀬だった。