だから、お前なんて。



「触んないでって」

「なんで?」

「な、なんでって嫌だから」

「嫌って顔してねーけど」


あたしは一体どんな顔をしてるって言うの?


「してるもん!」

「んじゃあ、本気で嫌がってみろよ」


その言葉が頭上が落ちてきた時にはもう人気のない廊下の壁に追いやられていて、背中がひんやりと冷たい。

そして、ムカつくくらい整っている春瀬の顔がずいっと不意に寄せられた。

なんでこんなふうになってるの。

数センチで唇が触れてしまいそうなほどの距離。

もう一度言う。なんでこんなふうになってるの。


「な、なにして……」

「ほら、早く嫌がれよ」

「っ、」


春瀬の真っ直ぐな瞳があたしを捉えて離さない。


「俺はクズだから、こんなことしちまうんだよ」


ふっ、と自嘲気味に、少し切なげに笑ってみせた春瀬。