「なんでやめないといけねえの?」
「みんな見てるから……」
「だからなに?
それともアイツに見られんの嫌なの?」
なんであんたがそんなに怒っているの?
別にあんたが怒ることなんて何もないじゃん。
「別にそんなんじゃないし」
「だったらいいじゃん」
柏木くんはあたしのことなんて気づいていない。
彼の瞳には最初から彼女しか映っていないんだから。
誰かに一途に愛されている彼女が羨ましくて、一方で誰からも大切にしてもらえない自分が虚しくなる。
「よくない」
「また泣きそうになってるって気づいてねえの?」
「……っ」
泣きそうになんて……なってない。なりたくない。
あたしは別に大切にしてもらえなくても平気だもん。大丈夫。



