だから、お前なんて。




だけど、そんな彼の周りに人が集まるのは彼自身に魅力があるからなんだと思う。


「だって、あずちゃんの反応おもしれぇもん」

「理由になってない」


隣でクスクスと笑っている春瀬。

悩みなんて何一つなさそうだけど、彼には誰にも言っていないことがあるそうで、それはあたしも知らない。

だけど、一つだけ知っているのはその事はいつまでも春瀬の心に影を落としているということ。


彼があたしを初めて抱いたあと、背中越しに涙が流していたのをあたしは気づいていた。


何も言わなかったのは彼が涙を流しているのを見るのは、初めてではなかったし、いつもヘラヘラと笑って、涙なんてものとは疎遠のように思える彼が、静かに、肩を揺らして、そんな彼にかける言葉が見つからなかったからだ。


それに……『会いてえな』そう呟いていたことも聞こえていた。春瀬があたしのことを本当に好きなのかと疑い始めたのはその頃だった。