「あー、それはどんまい」

「他人事みたいに言わないでよ、バカ」

「だって、俺ら他人なんだろ?」


こんなときだけ、ズルいとおもう。

自分の都合のいい時だけ他人のフリをする。

どこまでもズルくてクズな男の子だ。


「……そうだね。じゃあ、他人なんでバイバイ」

「そうはさせねえよ」


グイッと肩を持たれて後ろに引き寄せられる。

ほら、すぐそういうことをする。

弾けたように視線を春瀬の方に向けると、にやりと不敵な笑みを浮かべていた。

その笑顔が嫌い。いつだってあたしよりも一枚上手なんだから。

でも、その笑顔を見て胸を高鳴らせている自分が一番嫌い。


「つーかさ、お前帰ってからまた泣いた?」

「あんたには関係ない」


なんでそんなデリカシーのないことを言えるんだろう。あたしが今一番触れられたくないことなのに。