「うるさい、うるさい!」


そう言って暴言を吐くあたしを
春瀬は黙ってぎゅっと抱きしめた。

懐かしい香り、懐かしいぬくもり。
思わず、涙が溢れた。


「……辛かったよな」

「っ、」


春瀬が抱きしめながらあたしの頭をそっと撫でる。
まるで、腫れ物に触るかのように。
だから、つい錯覚してしまう。

自分は一番なれるんじゃないかって。

本当にあたしは学習しないバカだなあ。


「……でも、お前はほんと学習能力ゼロのバカだな」


あんたに言われたくない。
そう言い返してやりたいのに春瀬の声がいつもよりも弱々しくて何も言えなかった。

春瀬はそれっきり何も言わずに
ただあたしが泣き止むのを待っていてくれた。


「もう、大丈夫だから。迷惑かけてごめんね」


一時間ほど付き合わせてしまったから
そこはちゃんと謝っておかないといけない。