だから、お前なんて。




「思ってもないこと言わないでよ」


春瀬の程よく筋肉のついた胸元をドンッと押して
カバンを持つと、走って教室から出た。


だって、だって……


春瀬の表情が見たこともないくらい切なさで歪んでいて胸がぎゅってして苦しくなったんだもん。


なんで?
なんであんたがそんな顔をするの?


どうせ、これから他の女の子の家に行って
また薄っぺらい関係を築いていくんでしょ?


なのに、どうしてあたしに絡んでくるの?


やめてよ。
もう辛い思いはしたくないのに。


そんなとき、ブブッとスマホのバイブレーションが鳴った。


ロックを開いて、メッセージアプリを開くとさっき、振られた彼から《ごめんな》とメッセージが来ていた。


「なにがごめんなの……?」


謝るくらいなら、離さないでよ。
あたしは謝罪の言葉なんて聞きたくなかった。

来るはずのないきみとの明るい未来を夢見ていただけなのに。