ビターキャラメル ビター

「おおっ、良かったな。友達みんな決まって焦ってたから、またメシ食えなくなったらどうしてやろうかと心配してた」


「ちゃんと食べてましたよ。チビなうえにガリガリはないなって、……さすがに一年前身にしみました」


「ならいい」


美容室に通い始めた直後あたり、食欲の見事に落ちた私は、宗吾さんにそれをすぐに見抜かれた。急に痩せたのはもちろんのこと、髪を触ったときの感触に違和感があったのだという。
食事に連行されそうになり、それは宗吾さんの恋人に悪いからと断ると、それからは美容室の中で、女子受けしそうなカラフルなデリカボックスだったりケーキが用意されていて、口にするまで帰してもらえなかった。
食べ物に手を伸ばすのを躊躇う私に、宗吾さんは三ヶ月だけ頑張れと言った。三ヶ月経てば辛くなくなるからと。


――三ヶ月後、辛くなかったわけではないけど、日々を過ごした実感があるくらいには余裕が出来たのは事実だった。


色々あったなあ。すぐに自信をなくすしネガティブで立ち直りが遅い私は、わりとぼろぼろだったと思い返す。


「今度、就職祝いしてやるよ」


「え?」


「少しいいとこの飯にご招待します。紫織様」


「でも……」


「いいから空けとけな、予定」


宗吾さんの笑う顔が慈しみに溢れているからだ。
だからだと言い訳し、あんなに拒み続けていた誘いに頷いていた。