夢原夫婦のヒミツ

好きな子である蘭が急に顔を近づけてきたものだから、佐介は大きく身体をのけ反らせた。

「裏切り者はおかしいだろ? ……じゃ、じゃあ蘭も俺と同じ大学にすれば? 大学を卒業するまでに将来なにをしたいのか決めればいいじゃん」

おぉ……! これは佐介、なかなか頑張った! そうだよね、好きな子と同じ大学に行きたいよね。

激しく佐介の気持ちに共感しながら蘭の反応を待つ。すると案の定、彼女らしい答えが返ってきた。

「いいね、それ! そうしよう!! きっと親も納得してくれるはず……!」

あぁ、きっとまた佐介の気持ちはまったく蘭に届いていないんだろうな。

「お、おう。そうしろそうしろ」

だけど佐介が嬉しそうだからいっか。それに大学生になったら、ふたりの関係も変わるかもしれないし。

そんなことを思いながら窓の外へ目を向けると、土砂降りに雨が降っていた。

「うわぁ、朝より激しさ増していない?」

「うん、そうだよね」

発達した前線の影響で朝からずっと激しい雨が降っている。梅雨時期ということもあって、ここ一週間はずっと雨空。久しく太陽を見ていない気がする。