夢原夫婦のヒミツ

「なによ、慌てちゃって」

そう言うと蘭は私を見据えた。

「別に私と佐介に恋人がいないからって、うまくいっていないアピールしなくてもいいんだからね?」

「えっと……」

悲しい。私はただ、ふたりに相談に乗ってもらいたいだけなのに、信じてもらえないとは。

それほど私と大和さんの今の関係は、夫婦らしくないってことなのかもしれない。

「それに愛実と大和さんの出会いは、運命だっていえるくらい素敵じゃない。……愛実にとっては大和さんとの出会いは、つらい過去のものかもしれないけど」

「……うん、そうだね」

一気にしんみりとした空気に包まれる。

大和さんとの出会いを思い出すと、今でも泣きたくなる。だけどそれはきっと、悲しみの中、神様が私に与えてくれた一筋の希望の光だったと思うの。


* * *


私や蘭、佐介は元々山林に隣接する住宅地に住んでいた。お互いの家が近くて、幼い頃からずっと一緒だった。