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 「すぐにでも、エメルを見つけ出して謝って、ありがとうって伝えたかったけど。俺をみて思い出して辛い思いをさせるのも嫌だったんだ。」
 「冷泉様………っっ!」


 持っていたカップがカチンっと音をたててテーブルに落ちる。幸い割れてもいなく、中身も飲み切っていたので、汚れもしなかった。

 翠は、急に頭痛を感じてしまったのだ。
 色の話を聞いて、残っていた記憶が反応でもしたのか、と考えてしまう。色は、苦痛で顔を歪める翠を見て、「翠?大丈夫か?」と焦った表情で肩を支えて、顔を見つめていた。


 「ちょっと、頭が痛いだけです。………あの、教えていただき、ありがとうございます。昔から冷泉様と知り合いで、……冷泉様にずっと想ってもらえて幸せです。………でも、……もう、気にしないで………。」
 「翠、もうしゃべらなくていい。とりあえず、家にもどって休もう。」


 くらくらとする頭のせいで、うまくしゃべれなくなってしまう。その様子を不安そうに見つめながら色はそう言うと、色に支えてもらい車まで歩いた。

 色の部屋に着くと、すぐにベットに横になる。


 「冷泉様、すみません。せっかくお話聞かせて貰ったのに。でも、私、嬉しいんですよ?昔から冷泉様と会っていて、冷泉様がずっと覚えていてくれて。」
 「あぁ……今はまず寝ろ。」
 「はい………あの冷泉様。」
 「こうだろ?」


 翠が言いたいことがわかり、色は翠の頭を、撫でてくれる。温かい体温を感じ安心したのか、翠はすぐに寝てしまう。
 昔の記憶がいつか戻ること、願いながら。





 
 ぐっすりと寝て気づいた頃には14時を過ぎていた。ゆっくりとベットから体を、起こすと頭痛は、すっかりなくなっていた。
 安心して寝室を見渡すと、そこには彼はいなかった。
 部屋からでて、リビングにいくとPCの前に座る彼を見つけた。すぐに翠に気づいて、色は立ち上がった。


 「大丈夫か?体調は………。」
 「すっかりよくなりました。一気に昔の記憶の情報が頭に入ってきたので、疲れたのかもしれません。記憶は戻ってはないのですが……ごめんなさい。」
 「いいんだ。それに、俺は翠に感謝を伝えたかったんだ。俺を助けようとしてくれて、そして、友達になってくれて、ありがとう。」
 「冷泉様……….。冷泉様はずっと怖い過去を覚えていたのに、私は忘れて逃げてしまって、ごめんなさい。助けてあげられなくて……。それに、すぐにいなくなってしまって。」