*side叶夜*.-*

 

 -バタン。


 「はぁぁあ…。」


 水夏理の家から出てすぐに、ため息をつく。


 俺、あんな恥ずかしいことを…。


 自分で言ったことが、頭の中でリピートされる。


 しかも、勢いで水夏理に…キ…ス…しちゃったし…。 

 
 
 水夏理の唇、柔らかかったな…。


 そう思いながら、自分の唇を指でなぞる。


 俺、変態かよ……。

 


 「家…帰るか…。」


 少し歩くと、仲良さそうに歩くカップルが見える。


 羨ましい……ってか真由と春樹くん!?



 向こうもこっちに気がついたのか、手を振りながら、こっちに向かって来る。



 待って、俺まだ顔赤いっ…。


 
 「お兄ちゃん!!」


 「……。」


 「も-っ!朝から無視ばっかり!!」


 あー、こういうとき、こいつマジでうっとうしい。


 「叶夜、久しぶりだな。」


 「春樹くん、真由がお世話になってます。」

 
 ははは、と笑う春樹くんの顔は、少し赤い。


 よく見ると、真由の顔も赤い気がする。


 
 二人にも、何かあったのだろうか。



 キス…とか?



 そう思うと、キスしたあとの瞳が潤む水夏理の顔を思い出す。



 「お兄ちゃん、顔赤いよ?」


 「うっせー。」


 「ひっどー-っ!」


 真由が俺の背中をぽかぽかと叩く。


 「真由は本当にブラコンだな。」


 笑いながら、春樹くんが言う。


 「俺、邪魔者でしょ?先帰るわ、ごゆっくりー!」


 そういって、俺はその場を走り去った。

   

 

 「ただいま-。」


 真由が帰ってきた。


 「すぐにご飯のしたくするねー。」


 「…んー。」


 適当に返事を返す。

      
 「今日はね…きすがやすく売ってたから、きす買ってきたの…。」


 …キ……ス…。


 またあの時のことを思い出す。


 それを紛らわそうと、テレビをつける。


 
 『……雪のような口溶け。………マルティ・キッス。』


 キ…っ!


 チャンネルをまわす。


 『………色つきリップ!リップ・キッス!』


 キ…っ!

 
 チャンネルをまわす。
  

 『………今日のゲストさんは、大人気ジャニーズグループ、Kiss×Kissさんです!』


 キ…っ!


 どこのチャンネルも『Kiss』『キッス』って!


 タイミング悪すぎかよ!


 「お兄ちゃん、できたよ…?」


 「……お………う…。」


 「お兄ちゃん、顔赤いけど……。どうしたの……?」


 「なんでもね-よ……。」
 

 
 夕食が準備された席につく。


 「いただきます。」


 

   



 「ごちそうさま。」