「行ってくる。」


 水夏理のいない登校日。

 


 「お兄ちゃん、もう大丈夫なの?」
 

 真由の心配を無視して、いつもと同じ時間に家を出た。

 

 あのあと、何度も水夏理に連絡したけれど既読スルー。


 既読が付いても、全く返事が来なかった。

 

 「水夏理がいないと、生きてる気がしねぇ…。」




 そして、3分ほど歩いたところにある-、

 


 水夏理の、家…。



 

 -ガチャ。

 
 

 水夏理の家のドアが開く。

 


 出てきたのは、水夏理だった。



 バチッ、と目が合う。


 「水夏理っ!」、と叫ぼうとして息を吸った。


 が、思わず息を飲み込む。

 

 水夏理が目をそらし、ガチャ、とドアを開けて家に戻って行ったのだ。

 

 嘘…だろ?

 
 

 バタン、とドアが閉まる。

 

 その音は、昨日のドアが閉まる音よりも、ものすごく冷たくて、悲しげな音だった。

 

 

 

 「おはよう、って水夏理は?」
 
 
 
 お気楽に声かけて来やがって…。



 「もしかしてけんか?もう、何したのよ~!」


 
 藤森、全部といっては可哀相だが、おまえのせいだ!

 

 「なんでもねぇよ…。」


 
 「ふぅーん、あっそ。」



 藤森が自分の席に戻る。


 
 「はい、みんな席ついて-。」


 
 担任が教室に入ってきた。


 
 まだ水夏理は来てないけどなぁ…。


 あいつは遅刻するような奴じゃないし…。


 
 「えーっと…、今日、佐藤は体調不良で休みだ…。他にいない奴いるか-?」


 

 水夏理が休み…?
 

 だとしたら、俺のせいじゃねーか…。


 
 あの鈍感天然馬鹿…。

 

 ほんとに恋愛に疎いな…、あいつ。

 
 
 
 今日、見舞いにでも行ってみるか…。