「ねぇ、青ってどんな色?」


 
 突然の質問に、俺、相田 叶夜(あいだ きょうや)は足を止める。

 
 今は幼なじみの佐藤 水夏理(さとう みなり)と下校中だ。

 
 質問の主はもちろん水夏理だ。


 「急にどうした?」

 
 水夏理も足を止め、振り返る。


 「私ってさ、色…見えないでしょう?だから聞きたくなったんだ。」

 

 そう、水夏理はある障害を持っている。

 
 水夏理は色彩障害だ。


 簡単に説明すると、水夏理には色が見えない。

 
 つまり、水夏理の見る世界は『モノクロの世界』だと言うことだ。


 だから、いつもこうして一緒に登下校したり、外出するときは必ずついて行くようにしているのだ。



 「叶くん?」

 
 あ…。そうだ、青がどんな色なのか聞かれていたんだ…。

 
 「青…か…。」

 
 しばらく二人共無言になる。

  
 
 「空…、空の色…?」

 
 「それじゃあわかんないよ。ふふふ。」


 「笑うなよ。」


 笑う水夏理に『可愛すぎる。』と思ってしまうのは、俺が水夏理に惚れているからだ。


 いわゆる、『片思い』ってやつ。

 

 「あ、家着いちゃったね。」


 「ほんとだ。」


 「送ってくれてありがとう、じゃあね。」


 「ばいばいっ!」、といいながら一生懸命手を振る水夏理に顔が赤くなっているのが分かる。


 …なにこの可愛すぎる生き物。
 

 こうやって「ありがとう」、って言ってくれるから送る気になるんだ。

 

 水夏理が家に入るのを見届けて、歩き出す。

  
 俺の家はそこから3分ほど歩いたところにある。